稲垣吾郎のこれがホンモノの“おっさん映画”

阪本作品はこれまで劇的な要素が多かったが、今回は淡々として、静謐(せいひつ)と言えるほど。稲垣吾郎の炭焼き職人ぶりにもまるで違和感がない、というより、うっすら髭をたくわえた“土の匂い”のする男になっている。かといって職人気質あふれる入魂の匠、というふうではなく、親の仕事を“別に継がなくていいゾ”と言われて、逆に反発してみたものの…と告白するように、やや惰性で炭を焼いている風情もよく出している。一方、元自衛官を演じる長谷川も、朝ドラ『まんぷく』のイメージとは違って、暴力シーンでは凄みさえ見せる。逆に渋川は滑油的存在だが、時には鋭いことも言うナイス・キャラが立っている。この魅力的な男優たちの化学反応が、人生の折り返し点で自分を見つめ直す映画へと昇華してゆく。

稲垣が友人の突然の訪問に「何だよ。これから(カミさんと)セックスしようとしてたのに…」という冗談っぽいセリフがリアルだが、阪本作品らしくエロスは希薄。ただ、しっかり者の妻を演じる池脇千鶴が、触れんば落ちん、の風情でなかなかイイ。愛妻弁当で“いたずら”する茶目っ気も素敵だ。彼女は20代半ばの『ジョゼと虎と魚たち』(04年)で“完脱ぎ”していたが、あのころよりも、この“脱がない”熟女人妻役の池脇にソソられたりして。

39歳という中途半端な年齢の中年男たちの奏でる“三重奏”は不協和音を孕みつつ、突発的に生じる理不尽さを描いて、高年世代の心に突き刺さる。映画、テレビで妙に“おっさん”ブームだが、これがホンモノの“おっさん映画”だ

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